BFN.2

2021/06/02

私達を迎えてくれたのは、少し痩せたけれど、いつもと変わらぬひとみちゃんの笑顔だった。
札幌駅に程近いマンションの一室、ひとみちゃん、ショウジ、私、アキの4人で顔を合わせる。

伊藤アキトモ(以下、アキ)は、元Han-naのギタリストであり、公私共に、ひとみちゃんのパートナーでもある。
ギタリストとしては、天才的な閃きとセンスの持ち主で、その感性は誰もが認めるところだが、私生活の方では、天然ボケの愛されダメキャラ。
いつも、何かしらで、ひとみちゃんに怒られている。
そういえば、この日も、思いっきり怒られていたっけ。
しばらくプレイから遠ざかっていたこともあってか、今回のプロジェクトでは、プリプロ制作を中心に、ほぼ裏方に徹し、慣れない録音作業に最後まで奮闘してくれた。
1stシングル「Conciencia」と、この度配信された「カサブランカ」で、そのギタープレイの片鱗を聴くことができる。

既に録ってあった曲を聴きながら、アレンジの方向性について熱っぽく語るひとみちゃんを見ていると、余命数ヶ月ということなど、まるで信じられない。
歌だって、しっかりしている。
それでも、その頃の彼女は、自分の体力と残された時間に、かなり不安を抱えていたのだろう。
とにかく、歌える時にどんどん家で録っていく、というスタンスで、外部スタジオでのレコーディングなどという発想は、全くなかったようだ。

限られた時間の中で、倉本ひとみの歌声を残すということが先決だったし、無理はさせたくなかったけれど、「記念の一枚じゃない、世の中に出せるものを創りたい!」という彼女の意向を考えると、それは、大きな懸念材料ではあった。
ほぼ素人エンジニアのアキが録る宅録のクオリティで、果たしてそこまでもっていけるのか。。。
光明が見えたのは、ショウジの「冨井さんのところで録ろうよ」という一言のおかげだ。

冨井さんは、札幌のジョーダウンスタジオのオーナーであり、エンジニア。
Han-naも私自身も、アマチュア時代に大変お世話になった方だ。
そこで歌を録れるとなれば、不安解消、作品も大いにレベルアップするだろう。
ジョーダウンでなら!とひとみちゃんも乗り気になった。
幸い、彼女の住まいからの利便性もよく、体力的な負担も少なくてすみそうだ。

翌日、ショウジは早速ジョーダウンへ出向き、私はひとみちゃん宅で仮ピアノを入れた。
スタジオは、現在、冨井さんの弟子である河野さんが引き継ぎ、「河野音響」として運営されているとのこと。
忙しいスケジュールの中、快く協力してくれることとなった。
さらに、其々素晴らしいミュージシャンであり、旧友でもある、浜崎なおこ、Yan-G、yanzらに参加をお願いすることも決まった。

ヒトミィク・プロジェクト、始動。
濃密な時間の始まりだった。

to be continued…

ヒトミィク・プロジェクト 広本 葉子

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