BFN.3

2021/06/09

今振り返ると嘘みたいな話だが、この頃のひとみちゃんは、自分が歌えるリミットを、長くて年内いっぱい、と考えていたようだ。

実際、当時、体重は減り続け、抗ガン剤の副作用で手足症候群が出始め、口内炎や口角炎にも悩まされていた。お腹を切っているので、歌う時には腸ベルトが必需品で、それをしても、「腹筋が断裂してるからね、お腹に力が入らない。息がヒューって洩れちゃうんだ~」と嘆いていた。

時間は限られている。
通常のレコーディングのように、オケを作ってから本歌録り、というスケジュールでは、間に合わない。歌えるうちに、まずは歌を録ってしまわなくては。。。
東京に戻ってすぐ、歌入れの為の最低限のオケ作りを始め、10月半ばにはもう、ひとみちゃんはスタジオ入りして最初のレコーディングをしている。

河野音響のエンジニア・河野さんとは、すぐに意気投合した模様で、当日すでに、「良いキャッチボールが出来ている」と報告があった。
そして、「レコーディング、楽しい!もっと早くやればよかった!」とも。なによりだ。

こちらはこちらで、次から次へと送られてくる曲の仮オケ作りに没頭していたが、いかんせん、私もアキも(恥ずかしながら)DTMに関しては、ほぼ初心者である。
楽器が弾けなくても誰でも曲が作れます!というこのご時世に、曲がりなりにもミュージシャンでありながら、すっかり遅れをとった私達は、たぶんものすごく初歩的な問題に何度も躓き、たくさんの無駄なこと、変なことを繰り返しながら、なんとかデータのやり取りをしていた。

そんな中、10月下旬、なおちゃんとヤンジーが札幌入り、ひとみちゃんと、ほぼ20年振りという再会を果たす。

浜崎なおこ(以下、なおちゃん)は、元Replicaのヴォーカリストであり、現在は、ソロ活動の他、なおこと一郎(ARB田中一郎さんとのユニット)で活躍中。
倉本ひとみと双璧をなす、素晴らしい女性ヴォーカリストである。
私から見た二人は、励ましあい、刺激し合う、同志であり、良きライバル。
ちょっと羨ましいような関係だ。soul mate、と、ひとみちゃんは言っていたっけ。

Yan-G(以下、ヤンジー)は、同じく元Replicaのベーシスト。現在は、相島一之&The Blues Jumpers、APES等で活躍している。
私は、なおちゃんのソロでご一緒させてもらい、バンドの録音でもお世話になったことがある。プレイも、その人柄も、大好きなベーシストだ。
最高のロックベーシストであることは承知していたが、今回のプロジェクトでは、リリカルなバラードからヒップな16ビートまで、さらに幅の広いところを見せてくれた。

短い滞在の中、旧交を温め、さらにコーラス入れ(なおちゃん)までして、二人は東京に戻ってきた。

そろそろ、レコーディングに向けて、東京組でのバンドリハを始める頃合いだった。

 

to be continued…

ヒトミィク・プロジェクト 広本 葉子

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