BFN.9.5「Terminal」
2021/07/28
本来なら、ここから、芸森合宿レコーディングの話をするつもりだった。
原稿も、とうに出来上がって、送るばかりになっている。
それぞれの楽曲については、配信やパッケージの時期とは関係なく、時系列通りの曲の仕上がりに合わせて、少しずつ触れていこうと思っていた。
が、この度、「Terminal」が配信された。どうしても、今、伝えたいことがある。
この曲を渡されたのは、昨年の10月初旬。
ひとみちゃんは、相変わらず精力的に制作活動を続けていたが、腸からの出血などもあって、少し心配な状態だった。
「この曲、覚えてる?」と送られてきたメロディーには記憶がある。
昔、四ツ谷のフォーバレーで一緒に演った曲だ。歌詞も変っているし、展開も増えているが、好きな曲だった。歌も、仮歌とは思えないくらいの出来映えだ。
「いいね、どんな感じにする?とりあえず、データ送って。」と、その時は、いつものやり取りで終わった。
その後、珍しく、LINEではなく、メールの方に歌詞が送られてきた。
タイトルは、「Terminal」。。。そうか。
私は、俗な人間なので、ターミナルと言われて真っ先に思いつくのは、バスターミナルだとか羽田空港第一ターミナルだったりする。この時も、すぐにはピンと来なかった。
Terminal ー終末。
同じ病で闘病中の女性が亡くなったという。ひとみちゃんは、彼女のブログに、それまで随分、勇気付けられていたようだ。
死ぬことを恐れず、しっかりとした死生観を持ち、全てを受け入れて、いつも明るい人だったそうだ。
「旦那さんに向かって、何も怖くないよー、幸せー、っていつも笑ってる写真にグッと来て…以前に作った星空のイメージから、世界を広げてみました。」
メールの文面は、ちょっぴり照れくさそうだった。
今、その、名も顔も知らぬ女性に、ひとみちゃんの姿が重なる。
最後に会った時に、喋るのも辛そうなひとみちゃんが言ってくれた言葉が、「幸せだよ」だった。
楽曲の捉え方は人それぞれだ。聴いた人が自由に感じてくれればいい。これこれこういう曲です、と、殊更に説明するようなことは、本来、あまり好きではない。
「聴く人に、達観して死にゆく歌って伝える気はないけど」と本人が言っていたものを、第三者である私が明かすことの是非も、自分に問うてみたが、答えはなかなか出ない。
いろいろと迷った末、結局は、書きたい気持ちが勝った。
本当のところは、わからない。怖くはなかったのかな。ほんとに幸せだったのかな。
ただ、彼女がこの曲を書き、歌った、その思いが、多くの人に伝わればいいなと思う。
その息遣いひとつまで、じっくり聴いて欲しい。
次回は、いよいよ芸森です。
to be continued…
ヒトミィク・プロジェクト 広本 葉子
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