BFN.8
2021/07/16
三日間に渡るレコーディングの舞台は、札幌の河野音響。
市の中心部に位置する、アットホームな雰囲気の、とても居心地の良いスタジオだ。
社長でエンジニアの河野さんは、笑顔がフレンドリーな好漢で、当時40歳くらいか。
世間的にはどうか知らないけれど、我々の中に入れば、もう、若造扱いである。
ひとみちゃんは、河野っち、と呼んで、可愛がっていた。
普段は、通常の録音業務の他に、ゲーム音楽やCM音楽の制作も手がけている。
猛烈に忙しいスケジュールの中、ようやく空いた年の暮れ(普通なら仕事納めで、のんびりしたいはずだ)に、このレコーディングをねじ込んでくれた。
ヒトミィクプロジェクトの始まりから、なくてはならない札幌組のスタッフである。
今回、どうしてもスケジュールの都合がつかなかったヤンズは、残念ながら不参加。
初日は、なおちゃんのコーラスを録り、残りの二日間で、2曲のベーシックを録る、という予定だ。
初日、出番はなかったが、録音終了後になおちゃんのミニライヴを撮影するというので、顔を出す。
観客は、我々プロジェクトメンバーのみという、こちらからすれば贅沢なライヴだ。
逆に、身内ばかりで本人はやりにくいんじゃないかと思われたが、さすが、浜崎なおこ。
いつも通りの素晴らしい歌を聴かせてくれた。
この模様の一部は、youtube “河野音響 Monochrome LIVES “で観ることができる。
翌日、朝一の飛行機で飛んできたショウジが合流、いよいよリズム録りが始まる。
ピアノは、ドラムと同じブースにあるので、後で重ねることになった。
まずは、ショウジとヤンジーの出番だ。
ちょうど、河野音響の前身・ジョーダウンの富井さんが顔を出してくださったので、しばし、思い出話に花が咲く。優しい笑顔は、ちっともお変わりない。
今日のひとみちゃんは、歌い手であると同時に、このプロジェクトのプロデューサーであり、ディレクターでもある。トークバックスイッチの前に陣取り、録ったものをジャッジ、様々なアイディアやリクエストを出す。合間には、また何かしでかしたのか、アキを怒ったりもしている。
その姿の、なんと生き生きしていることか。
やはり、倉本ひとみは、音楽に関わっている時が、一番楽しそうで、一番輝いている。
そもそも、二日で2曲のベーシックを録るというのは、随分、余裕のあるスケジュールだ。
自分のバンドでは、1日で5曲なんてことも当たり前の身にとっては、ものすごい贅沢である。
もちろん、時間をかけて納得のいくものを、という気持ちの現れだろうが、そこには同時に、メンバー達と共有するこの時間、この空間を存分に味わいたい、という思いもあったのではないか。
その思いに応えて、ショウジもヤンジーも、自らアイディアを提示し、ディスカッションを繰り返しながら、テイクを重ねる。二人とも、疲れた様子ひとつ見せずに、納得のいくまでやってくれた。(ついでに、もちろん、私も頑張りました。)
そうして、「conciencia」「風になりたい」の2曲の録りが完了、微妙に残った時間で、慌ただしく、なおちゃんのフェイクやボンゴのワンフレーズを録る。
こぼしたものもあり、終わってみれば、全然余裕のあるスケジュールでもなかった。
楽しい時間は、過ぎるのも早いのだ。こうして、2019年は終わろうとしていた。
to be continued…
ヒトミィク・プロジェクト 広本 葉子
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