BFN.19

2021/10/04

4月に入ってすぐ、東京組のメンバーそれぞれに、ものすごく大きな段ボール箱が送られてきた。
中には、大量のトイレットペーパーや備蓄用の食料品などが、ぎっしり詰まっている。

この頃の会話は、音楽のことを別にすると、やはりコロナ関連のことが多くなっていた。
当時、トイレットペーパー事情は本当に深刻で、我々プロジェクトメンバーの間でも、「あと2ロールしかない!」「うちは、あと3個」といった会話が飛び交っていたのだ。
自分が辛い時期だったにもかかわらず、こうして人の世話を焼いてくれるのは、いかにも、仲間思いのひとみちゃんらしい。おかげで、皆、安心して用を足せるようになった。本当にありがたかった。

そんな中、またしても、「カサブランカ」のコーラス入れが行われた。
「またしても」というのは、実際、「えっ、まだ入れるの?」というのが、その時の私の率直な気持ちだったからだ。
この曲には、既に、星さんを始めとして、なおちゃん、ヤンズ、ショウジのコーラスが入っている。
充分ではないか。かてて加えて、先月、野呂君のコーラスまで入れたのだ。
お腹いっぱい、チャンネルもいっぱい、と私は思っていた。

野呂君とは、元NONSECT(ホリエさんと私が在籍していたバンド)のヴォーカル、野呂孝一。
今は、札幌でお店をやりながら、時々、歌っている。
私は、何年か前に、仲間内のイベントで、久しぶりに同じステージに立った。
元メンバーの口から言うのも照れ臭いが、良いヴォーカルである。
時々、ではなく、もっとちゃんと活動すればいいのに。ずっと、そう思っている。
ひとみちゃんが、そんな彼を引っ張りだしてくれたことは、とても嬉しかった。
内心、これ以上コーラスいる?と思っていた私だが、「野呂君の声が入って、俄然ロックになったよ」
ということだ。結果オーライである。

「こうなると、トップがちょっと物足りないんだよね」と、ひとみちゃん。
いやもう、こうなったら、好きなだけ入れてください。
という訳で、白羽の矢を立てられたのが、札幌が誇るメタル・クイーン、久保田ヨーコである。

久保田陽子(以下、ヨーコ)は、PROVIDENSEというバンドでデビュー、SABER TIGER等を経て、今は、HR/HM界のツワモノ達と、PUNISHというバンドで活動している。その他にも、長渕剛を始めとして、数々のライヴサポートやスタジオワーク等、幅広い分野で活躍中だ。
昔から変わらないルックスと、物怖じしない人柄の、カッコいいロック姉ちゃんである。
ひとみちゃんの思惑通り、ヨーコの声が入って、この曲は、一段とロックになった。
中盤のハイトーンのフェイクは、まさに、久保田ヨーコの面目躍如!といったところだ。

こうして、誰をとっても一流のヴォーカリスト、という豪華な布陣でのコーラスが出来上がった。
こりゃあ、TD(トラックダウン)が大変そうだと思ったが、まぁ、私がやる訳じゃない。
コバヤンが頑張ってくれるだろう。

その翌日。ついに東京に、初めての緊急事態宣言が発令された。
4月7日、東京の感染者数は、87人だった。

 

 

to be continued…

ヒトミィク・プロジェクト 広本 葉子

Leave a Comment

入力エリアすべてが必須項目です。メールアドレスが公開されることはありません。

内容をご確認の上、送信してください。