BFN.16

2021/09/12

3/10、ヒトミィク・プロジェクト初の、東京でのレコーディングが行われた。
場所は、サウンド・クルースタジオ、エンジニアは、ホリエさんの右腕ともいうべき、コバヤンである。

コバヤンこと小林勝行氏は、現在43歳のフリーのエンジニア。
織田哲郎氏のスタジオでそのキャリアをスタートし、ホリエさんとは、ELLEGARDENやSTANCE PUNKSを始めとして、数々のレコーディングを共にしている。
コバヤンがアシスタントの時代からのつきあいだそうで、二人のやりとりを見ていると、その信頼関係の深さが窺える。
このプロジェクトでは、ホリエさんからの細かい注文に加え、倉本ひとみの無茶振りも受け止めなければならない。苦労も多かったことと思うが、いつもニコニコ、楽しんで作業してくれていた。

まずは、「シエスタ」の弦を録る。
30年近く前に初めて一緒に演奏し、「いつか形にしたいね」と事あるごとに話していた曲であり、今回、ひとみちゃんから全面的にアレンジを任された曲でもある。
どの曲にも愛着があるが、「シエスタ」に対する私の思い入れは、一際強い。
ほぼ初めての弦楽器アレンジには時間をかけたし、生(なま)にするか打ち込みにするかでも悩んだ。
ホリエさんとも相談のうえ、生の弦と打ち込みをミックスすることにして、生の方は、ヴァイオリンを入れるならこの人、と決めていた向島さんにお願いした。

向島ゆりこさんは、ジャンルを問わず、スタジオワークやアーティストのサポートから舞台・映像の音楽監督まで、あらゆる現場で活躍しているヴァイオリニスト。最近、二枚目のソロアルバムを出した。
技術に裏打ちされた豊かな発想のプレイと、ポジティブで大らかな人柄が魅力的な女性である。

第一、第二ヴァイオリンとヴィオラ、それぞれ2トラック、計6トラックを弾いてもらう。
この時のディレクションは、ホリエさんと私の二人でやっていたが、案の定、「今のでいいじゃん!」というせっかちな(ホリエさん曰く、私もひとみちゃんも「せっかち」なんだそうだ。う~ん、まぁ、たしかに。)私に対して、「もう一本、もらっとこう」という慎重なホリエさん。
あまり気が合うとはいえない私達を、ひとみちゃんは、いつも笑って、黄金コンビ!と、言っていた。
そんな迷コンビだが、和気藹々とした空気の中、録りは順調に進み、予定より早く終了。
「シエスタ」は、向島さんの弦が入って、さらに深味のある曲になったと思う。

向島さんと入れ替わりに、これからギターダビングをするケイゾウが登場、前後して、他のメンバーもやって来た。今日は、ケイゾウ以外はインタビューを撮るだけなので、気楽なものだ。
ギター入れをひやかしつつ、合間に個々のインタビューを撮る。
もう少しくだけた会話も撮りたいということで、まだまだ終わりそうにないホリエさんとケイゾウ(手がつる程、弾いた…弾かされた?らしい)を残し、居酒屋へ移動。河野っち、大山監督も加わって、話に花を咲かせた。ちなみに、お酒が入って口が滑らかになったこの時の会話が、どこまで使えるものだったかはわからない。今も続くコロナのせいで、皆で会食したのは、この時が最後であった。

この日、ひとみちゃんは、ちょうど病院だった。血液の数値はギリギリだったが、無事、抗がん剤投与が行われたという。抗がん剤をやれば、どうしても白血球は減少し、感染症に罹りやすくなる。
センセーからは、インフルとコロナにはくれぐれも気をつけるように!と、怖い顔で言われたそうだ。

動きづらい状況ではあったが、ひとみちゃんは、今月中に全ての歌入れを終わらせるというハードな目標に向けて、邁進していた。

 

 

to be continued…

ヒトミィク・プロジェクト 広本 葉子

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