BFN.6

2021/06/29

「奇跡、マジで起こりました!あと一年は生きられそうだよ!」
ひとみちゃんからの、検査結果の報告である。
CT検査では、明らかな腫瘍縮小、癌の壊死への変化を確認。マーカーの数値も、悉く激減している。

9月に連絡をもらって以来の明るいニュースだ。彼女の嬉しそうな顔が目に浮かぶ。
ありがたい。本当によかった。でも、これは、奇跡なんかじゃないよ。
辛い副作用に耐えて治療を続けたひとみちゃんが、勝ち取った成果だよ。
奇跡というならば、もっともっと、欲張りたい。
このまま腫瘍がどんどん小さくなって、消えてしまえばいい。

この結果を受けて、時間的にも精神的にも少し余裕ができたひとみちゃんは、何曲かは、オケができてから歌入れしたいな、と話すようになった。
もちろん、こちらも望むところだ。スカスカの仮オケで歌うより、その方がずっと気持ちも入るだろう。

一方、プロジェクトの方は、ひとつの転機を迎えた。
当初から、彼女の目指すものが、バンドサウンドというよりは、サンプリングやループ、エフェクトを多用した打ち込み主体の音楽の方に向かっていることには、薄々感づいていた。
そのため、中にはもちろんバンド向きの曲もあったが、そうでない曲については、正直、頭を悩ませてもいた。現状、プロジェクトメンバーには、その道のプロがいないのだ。

そんなある日、「ホリエさんにお願いしたいんだけど、どう思う?」との相談があった。

ホリエアキラ(以下、ホリエさん)は、元NONSECTのギタリスト。札幌時代からの音楽仲間であり、私とは同じバンドのメンバーだから、当然、古いつきあいである。
解散後、相川七瀬等のアレンジで頭角を現し、その後、人気バンドELLEGARDENのプロデュースを手がけるなどして、今や、アレンジャー、プロデューサーとして、引っ張りだこの存在である。テクノロジーを駆使した打ち込みも、お手の物だ。

「忙しい人だから…頼んでいいのかな」と、珍しくしおらしい事を言うひとみちゃんだったが、大丈夫だよ、喜ぶよ、と背中を押す。もちろん、ホリエさんは、二つ返事で引き受けてくれた。
とはいえ、この時点で彼にお願いしたのは、2曲程度のはずだ。その後、サウンドプロデューサーとして全てを統括し、膨大な仕事量に嬉しい悲鳴を上げることになろうとは、ホリエさんも予想していなかったに違いない。

同時に、ホリエ組のレコーディングには欠かせないケイゾウにも、ギターをお願いすることが決まった。

沼田恵三(以下、ケイゾウ)は、元Han-naのギタリストとして、アキと二人、バンドのギターアンサンブルを支えていた。解散後は、藤重政孝を始め、様々なサポートやバンドで活躍、現在はK’ishという自身のユニットでも活動している。
(私の中では)Han-na時代は、緻密に計算されたお洒落なギターを弾く、クールなイメージだったが、後年、他バンドでのエモーショナルなプレイを観て感銘を受け、認識をあらためた。
今回のプロジェクトでは、黙々とフレーズを重ねる、職人的な一面も見せている。

新たな助っ人の二人を得て、ヒトミィクプロジェクトは、さらなる広がりを持つこととなった。

 

to be continued…

ヒトミィク・プロジェクト 広本 葉子

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