BFN.34
2022/01/17
抗がん剤による副作用がひどくなり、ひとみちゃんは、かなり辛そうだった。
スマホで文字も打てないくらい指先が痺れたり、貧血を起こしたり、鼻血が止まらなくなったりしていたのだが、とりわけショックだったのは、腸からの出血があったことだ。
大腸の手術の為に造設したストーマ周辺からの出血で、薬のせいで血管が脆くなり、粘膜にもダメージがあるんだろう、とのことだった。
この段階で、ストーマをはずし腸を繋ぎ直すというのは、現実的に無理な話だ。
急な出血に、本人はどんなに驚き、不安を感じただろうか。
こちらとしては、そんな状態で腸ベルトを巻きながら歌うというのが、とにかく心配だった。
当初の目標、いや、それ以上のことは、充分達成している。無理して欲しくない。
歌い続けることがひとみちゃんのモチベーションであることは重々承知しており、その気力を挫きたくはなかったが、この時ばかりは、彼女にそう言った。
食欲がかなり落ちてきたこともまた、心配の種だった。
ひとくち食べては横になって、の繰り返しだという。食べると苦しくなるし、時間もかかる。
食欲がない、というのも確かだろうが、食べる行為自体が辛いようだった。これは、副作用ではなく、肝臓の病の影響だったのではないかと思う。
「痩せたら声が出なくなる、それだけが心配」と言って、体重維持のために頑張って食べていたが、食べられるものも限られており、「美味しい」と感じることもなく無理やり食べるというのは、辛いことだ。
体重は落ちてきたし、その後も、軽い出血を繰り返していた。
「横になっていることが多くなりました」という言葉に、胸が塞がった。
それでも、ひとみちゃんは、歌い続け、曲を作り続ける。
この頃は、「Proof」「Pinky」の歌入れ、「バレリーナ」のエディットをこなし、さらには、なおちゃんに続く第二弾として、野呂孝一をプロデュースするべく、新たな意欲を燃やしていた。
後には、「My life~」の、それこそ腸がぶっちぎれそうな歌で、我々を驚かせることになる。
私のところには既に、新曲「Terminal」のデモが送られてきていた。
この曲については、前にもブログで触れている。曲に対するひとみちゃんの想いについては、そちらを読んでいただけると有難い。
デモの仮歌は、いつも本番に引けを取らないクオリティだったが、「Terminal」の仮歌は、なかでも特に素晴らしかった。その歌を、彼女はクジラのSEとクリックだけで録ったという。すごい。
ノイズ等の問題がなければ、これを本歌としても良かったくらいだ。
ともかく、この歌があれば、充分。ピアノは、極力音数を抑えた。元々、手数が少ない私だが、いつも以上に抑えた。アレンジもシンプルで、SEのバランスが難しそうだと思っていたが、それも、とても良い感じに仕上がった。忘れがたい一曲。
後日、大山監督が撮ったMVを観た。海辺でピアノが燃える様は、美しくもあり、残酷でもある。
ピアノが燃え尽き、崩れ落ちるところで、胸がチクリと痛む。
穏やかな安らぎを歌った曲だけれど、この映像には小さな棘が潜んでいると感じるのは、私だけかな。
ひとみちゃんらしい、と思っている。
to be continued…
ヒトミィク・プロジェクト 広本 葉子
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