BFN.24

2021/11/08

6/13、ひとみちゃんが、7年ぶりに上京した。
「Good-bye 朱鷺」のコーラス入れのディレクションと、今後のTDの打ち合わせの為である。

その2日前、肝臓の一部の数値が少しだけ下がり、センセーから「合格!」の一言をもらったとの報告があった。僅かなりとも、新しい薬が効いているようだ。ありがたい。
そして、この結果に力を得て(つけ込んで、と本人は言っていた)、抗がん剤を一週間先送りにしてもらえるよう頼んだと言う。センセーは、少し心配そうな顔をしたが、OKしてくれたらしい。

実際に顔を合わせるのは、2月の芸森以来である。
久しぶりに会えるというので、私を含め、録りのないメンバーも集合していた。
移動だけでも疲れたはずだが、ひとみちゃんが思ったよりもずっと元気そうで、安心する。
できるだけ身軽で来ればいいものを、山ほどお土産を抱えてくる、そんなところも相変わらずだ。
この日は、河野音響・河野っちも、「見学」と称して、わざわざ札幌から来てくれた。

「Good-bye 朱鷺」(当時はホリエver.と呼ばれていた)のコーラスも、瑠璃ver.とは形を変えた凝ったものだった。しつこいようだが、本当に、ひとみちゃんのコーラスに対する拘りは、半端ではない。
その要求に応えるなおちゃんは大変だが、二人のやり取りは、いつもとても楽しそうだ。
愛と信頼の証である。
リモートと違って作業も順調に進み、もちろん、コーラス自体も納得の仕上がりであった。
翌日、札幌に戻ったひとみちゃんからは、「体力に自信がついた!まだ動ける!7月のTDにも行けるよう頑張ります!」という嬉しいLINEが入る。
コロナを含め、上京に関しては何かと懸念もあったが、今回は反対しなくてよかった。
彼女には、皆と音を創る、こういう時間こそが必要なのだろう。

それから数日後、新たな検査結果の報告があった。
「やりましたよ!ALPの数値が下がりました!」
ALPとは、ガンの勢いを示す数値のひとつで、ひとみちゃんのような転移性の肝臓ガンでは、指標になる大事な数値だという。これが下がったということは、ガンの勢いが落ち着いた、ということらしい。
上京前は、一部の数値が下がったとはいうものの、ALPは600を越えており、「さっくり黄疸が出る数値なんだよ」という話だったのだ。
上京してスタジオに入れたことで、免疫がアップした。大事なのは気力。音楽のチカラ。
彼女の口から、明るく力強い言葉が溢れ出る。
検査結果に一喜一憂しまい!と心に決めていた私も、久々の朗報に、やっぱり喜んでいた。

東京から戻ったひとみちゃんは、その後休む間も無く、「シエスタ」と「風になりたい」の歌入れを敢行、これで、当初予定の全ての歌入れが完了した。
(ちなみに、河野音響では、この歌入れの為に大枚をはたいて、ひとみちゃんの声との相性が良い「67」というマイクを購入している。ありがたい話だ。どうか元がとれますように!)

エディットやTD、最終的なマスタリングと、まだ作業は残っているが、誰もが、いよいよこのプロジェクトも大詰めを迎える、と考えていたに違いない。一人を除いては。
たぶん、ひとみちゃんの中には、この時既に、新たな目標が芽生えていたのだ。

 

to be continued…

ヒトミィク・プロジェクト 広本 葉子

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