BFN.13

2021/08/23

東京組の大半が帰京し、私も実家に戻っていた芸森4日目は、ホリエさん監修の元、アキとケイゾウによるギターダビングが行われた。

ひとみちゃんからは、時折、実況LINEが入る。
「アキトモは全部ケーゾーに弾かせようとしてます」
「アキトモ…御自分で作られたリフを、すぐ忘れてしまわれます」等々。
こう書くと、文句ばかり言っているみたいだが、その実、アキの感性を誰よりも信頼していたのは、おそらく、ひとみちゃんだ。しばらくギターから遠ざかっていたアキに、もう一度、ギタリストとしての姿を見せて欲しかったのだと思う。
ちなみに、このレコーディングの為に、アキは新しいDuesenbergを購入して、やる気をみせた。
そのギターが、今後「素敵なインテリア」にならないことを、切に願っている。

一方、ケイゾウの方は、ホリエさん担当の打ち込み曲の録りを問題なく終えていたが、アレンジが急遽見直しになった「カサブランカ」のギター入れには、最後まで苦労させられたようだ。
が、その甲斐あって、この曲は、プロジェクト中でも、一際バンドらしい仕上がりの一曲となった。アウトロのおしゃれなギターソロは、ケイゾウによるもの。

ホリエさんはと言えば、芸森に入るまで、今回録音したバンド主導の曲を、たぶん聴いたこともなかったはずだ。そもそも、皆で集まるから、顔合わせの意味もあって来てもらう、くらいのことだった。
やることなくて時間持て余すかもね、まぁ、のんびり楽しんでもらえれば、なんて話もしていたのだ。
にもかかわらず、マイキングに始まり、最後のギター入れまで、熱心に取り組んでくれた。
この頃、ひとみちゃんの頭に、ホリエさんに全体のサウンドプロデューサーをお願いしようという考えが芽生えたのかもしれない。

翌日は、場所を河野音響に移して、「Prussian blue」のフルートと「conciencia」のサックスのレコーディング。プロジェクト初のゲストミュージシャンの登場である。

山本一(はじめ)さんは、札幌在住ながら、東京で活躍するサックスプレイヤーで、フルートもこなす。
paris matchから郷ひろみまで、本当に幅広い分野で活躍されている。
私の知人の紹介で、今回、参加をお願いした。初対面だったが、気さくで素敵な方だ。
第一弾singleとして発表された「conciencia」は、私見だが、ヒトミィクが標榜するNeo-kayoを最もよく体現した一曲である。古さと新しさの混交するこの曲の味わいは、はじめさんのサックスに依るところも大きい。
「Prussian~」での、深く青い空を吹き抜ける風を感じさせるフルートもまた、素晴らしかった。
景色が見える!と、ひとみちゃんも絶賛していた。

こうして、芸森から続いたレコーディングが、ひとまず終わった。
そんな素振りを周りには少しも見せなかったが、ひとみちゃんは相当疲れていたはずだ。
それでも、メンバーと共にした時間は活力にもなったようで、今後の歌入れに向けて、やる気満々、すでに録り終えた曲も歌い直したい!というほどの意気込みだった。
プロジェクトも、ここからいよいよ佳境に入る、と思われた。

だが、この頃、世の中が大きく変わり始めていたことに、我々はまだ気づいていなかった。
COVID-19…コロナである。

 

to be continued…

ヒトミィク・プロジェクト 広本 葉子

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