BFN.51 終りに

2022/05/15

ひとみちゃんは、とても安らいだ顔をしていた。
病魔が去り、全ての薬毒が抜け、浮世の悩みからも解放されて、静かに眠っているかのようだった。
そして、本当に、本当に綺麗だった。
この黒く長い睫毛を、いつもどれだけ羨ましく思っていたことか。

続く慌ただしい日々のことに、簡単に触れておく。
ひとみちゃんの意向で葬儀はごく内輪で済ませる予定だったが、予想以上に多くの方々に参列していただき、たくさんのお花が届いた。彼女を愛した人々と花に囲まれて、ひとみちゃんは旅立った。
葬儀の翌日に予定していた二胡とギターのレコーディングを、私達は延期せずに行った。
二胡は、小山玉蘭さんに素晴らしい演奏をしていただいた。
疲労困憊のアキも東京まで来てくれて、ひとみちゃんの遺影と共に、最後の曲となった「瞳で抱いて」のケイゾウのギター入れを見守った。

彼女が生前繰り返し口にした「幸せ」という言葉は、たぶん、残される私達に向けられたものだと思っている。「幸せだよ。だから、あまり悲しまないでね。」というメッセージだったのだろうと。
同時に、言葉通り、彼女は本当に幸せだったと信じている。
まさしく「歌うために」生きた。持てる力全てを注いで、アルバム2枚分もの楽曲を遺した。
「満ち足りた毎日」と本人が言っていた通りの、素晴らしい日々だったのではないか。

プロジェクトはまだ終わらない。
これからも配信は続き、年内には二枚目のアルバムが出る予定だ。
大山監督のドキュメンタリーも随時公開され、5/22には、追悼ライヴが行われる。
ヒトミィクの音楽をより多くの方々に届けるために、私達は、もう少し走り続ける。

この一年は、私にとって、プロジェクトでの濃密な日々を追体験する毎日だった。
当時の記憶を掘り起こし記録していく作業は、時に辛いこともあったが、幸せな経験でもあった。
なぜなら、40年近いつきあいの中で、これまでにないほど彼女のことを考え、その存在を近しく感じることができたのだから。

感性が豊かで、情の深い人だった。何事にも全力投球の熱い人だった。時には、わがままで面倒臭いヤツと思ったこともあった。
朝まで呑んで、音楽のこと、恋愛のこと、たくさんの話をした。
お互いに腹を立て、ぶつかり合ったこともあるし、疎遠になった時期もある。
今、全てをひっくるめて、彼女に出会えたことを嬉しく思い、共に過ごした時を愛おしく思う。
そして、彼女の最後の生き様は、最高にかっこよかったと心から思う。
彼女のことを訊かれたら、「とにかく、すごいオンナだよ」と言うだろう。
そのすごいオンナの遺してくれたものを胸に、私は私の「証」を残すべく、生きていこう。

最後に、このブログを読んでくれた皆様に感謝を。
ひとみちゃんとの約束と、一人でも読んでくれる人がいるという思いが、この一年、面倒くさがり屋の私の尻を叩いてくれていました。ありがとうございました。

ヒトミィク・プロジェクト 広本 葉子

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最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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