BFN.46

2022/04/10

3/4、「今日は病院でした。とても残念な検査結果でした。」とLINEがあった。
いつものように悪い数値を特にに示すこともなく、多くを語らない事から、逆に、とてもとても辛い結果なのだろうということが察せられた。
ほどなく、今夜リモート会議を行うので参加して欲しいと連絡が入った。
そこで現時点での病状報告などをすると言う。

参加者は、ひとみちゃん、アキ、ショウジ、ホリエさん、大山監督に私を加えた6人。
実を言えば、この会議で交わされた話を、私はあまり覚えていない。
病状報告を受け、残された時間が少ないことは理解した。
その後、これからのスケジュールを確認、プロモーションについて話しあったはずだが、私は殆ど発言もせず、ぼんやりとそこに居ただけだった。
ひとつだけはっきりと覚えているのは、4月のTDとレコーディングの為に、ひとみちゃんが上京すると決めたことだ。
「みんなに会えるのは、きっとこれが最後になるから。」
気丈に振る舞うひとみちゃんの声が、この時少しだけ震えていた。

事ここに至っては、止めるつもりもない。
彼女の体調がそれを許すことを願うばかりだった。

3/11の検査では、何もしなければ5月まで保たないと言われたとのことで、スチバーガという薬剤を用いることになった。右胸や肩に放散痛があって、翌日から医療用麻薬を出してもらうことにもなっていた。辛い日々が続いていたが、医師や看護師の皆さんは、「元気が1日でもキープできるようサポートします!」と懸命に支えてくれているとのことだ。
「私が診察室に入ると〝CONCIENCIA〞が流れるんだよ。」ひとみちゃんは嬉しそうに話していた。

そしてこの日、プロジェクトで手がけた最後の曲になる「瞳で抱いて」のデモが送られてきた。
「Pinky」に続いて、Han-na時代の曲のリメイクになる。
過去にジャイアントシングルという企画の中の一曲として限定発売されているが、もう一度、きちんと日の目を見せたいのだと言っていた。
時間的なことを考え、細かいアレンジは後回しにして、彼女が歌入れできるオケを早急に作りたかった。彼女のために私ができることは、もうそれくらいしかない。

16日に仮ピアノとベースを入れたオケを送り、翌17日には、河野音響で歌入れをしている。
これが、スタジオで彼女がレコーディングした、最後の歌になった。
体重が落ち、持続力が無くなったと嘆いていた中での歌入れで、本人がどう感じていたかは判らない。
だが、私の中では、一曲挙げるとするなら、この「歌」が本プロジェクト中のベストだ。
聴く度に胸に迫るものがある。

翌日の検査結果では白血球の数値が「思わず吹き出すほど」悪く、けれど、ひとみちゃんは「ここまできたらさぁ、大笑いで生きるのがいいね」と明るく話していた。
このところ、「ステロイドの影響か、やる気がモリモリ」と比較的元気そうでもあり、「ひとつでも多くの制作作業をこなして、魂焦がしまくります!」と意気盛んな様子は、頼もしくさえあった。

そんなやり取りを交わしたばかりのその夜、ひとみちゃんは出血多量の為、緊急入院した。

to be continued…

ヒトミィク・プロジェクト 広本 葉子

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