BFN.39
2022/02/21
この頃、ひとみちゃんの頭を悩ませていたのが、病気のことを公表するか否か、という問題だった。
元々、先入観無しに音楽を聴いてもらいたいという思いは強く、闘病中であること、余命宣告を受けていることは、まだ公にしたくないと言っていた。タイミングを計って、いずれ公表するつもりではあったようだが、まずはフラットな状態で音楽を認知してもらいたい、と考えていたのだろう。
だが、先の診断を受け、「時間が足りない」と感じたひとみちゃんは、迷い始めていた。
今のままでは、これからのプロモーションが中途半端になるのではないか、と心配していたのだ。
折しも、サイトの構築が大詰めを迎えており、ヒトミィクをイメージ付けるコピーやメッセージを思案している最中であった。
公表することには、良い面も悪い面もあるだろう。自分ならどうするかと考えたが、答えは出せなかったし、何が正解かもわからない。
思い悩む彼女に、「プロモーション云々は二の次、自分の思うようにやればいいよ」としか言えないのが辛かったが、他に言いようがなかった。これは彼女が決断するしかないことだった。
結局、サイトでは「人生は甘くない。でも死ぬまで歌い続ける。それが私である証だから。」というコピーを使用し、直接的な告知はしなかったが、この件に関しては、ひとみちゃんの気持ちは最後まで揺れ続けていたように思う。
制作の方では、年末に4曲のTDと「INORI」の歌入れを行う予定で、ホリエさんからは作業を終えた曲が立て続けにアップされてきていた。どの曲も良い仕上がりで、ひとみちゃんも喜んでいたが、ここからさらに、たくさんの要望が出てくることは、わかっている。
ホリエさんが一息つけるのは、もう少し先になるだろう。…いや、一息はつけないかもしれないな。
そんな中の一曲「Pinky」は、他の楽曲とはまた、一味違う仕上がりになっていた。
アレンジ自体、若さ溢れるHan-naバージョンとは全く異なる「大人でオシャレな感じ」になったのだが、さらに、ギターにもヴォーカルにも思い切った加工が施された。
ヒトミィクの音楽の振れ幅を感じさせる一曲となったように思う。
最後に会えたあの日、ひとみちゃんは、この曲のMVについて、そのアイディアを懸命に私達に伝えようとしていた。アニメーションを使いたいというのは、彼女の希望だ。
そして、それはまた一人、懐かしい人と彼女を繋ぐことにもなった。
ながはり朱実さんは、長野市在住、現在はイラストレーター、グラフィックデザイナーとして活躍されている。アキが長野に居た頃に知り合った方で、当時は、初々しい専門学校生だったそうだ。
ながはりさんが、現在の仕事についた経緯には、ひとみちゃんとアキも深く関わっているらしい。
「Pinky」のMVは、そんな縁のある方に創っていただいた。
出来上がった作品は、ポップな中にも、ちょっと毒がある。私の思う「Pinky」にぴったりだった。
そして、ながはりさんには、その後のヒトミィク作品のアートワークでもお世話になっている。
ひとみちゃんも喜んでくれているだろう。
サイトもオープン、半ばには「COCIENCIA」のトレーラーも上がってきた。
既に懐かしささえ覚える芸森での映像を見ながら、ようやくここまで辿り着いたことを感慨深く思う。
だが、完成した作品を世に出していくという作業は、まだ始まったばかりだ。
to be continued…
ヒトミィク・プロジェクト 広本 葉子
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