BFN.28

2021/12/06

検査結果は悪くなかったものの、辛い副作用は、相変わらず、ひとみちゃんを苦しめていた。
夏の暑い盛りに、ひとみちゃんは水に触れず、冷たいものが全く飲めなかった。かといって、熱いものもダメだったようで、1日に必要な2ℓの水分をヌルい飲み物で摂る、という可哀想な状況であった。
果物も、もちろん常温で、バナナなどを一旦お湯につけて食べるのがちょうどいいという。
痺れの方も相変わらず辛そうだったが、それらの症状以上に気になっていたのが、眠気や体のだるさが続くことだった。

「今回の薬はダウナー系なのか、なかなかダルさが抜けないんだ。」
「それと…肝臓ガンは、だんだん眠る時間が増えていくって聞いてるから、ちょっと不安。」
何気なさそうな一言だったが、心臓をぎゅっと掴まれたような気がした。
私自身、これは肝臓からくる症状だという気がしていた。父がそうだったのだ。
数値が安定しているとはいえ、やはり病は少しずつ進行しているのだろう。そりゃそうだ。余命宣告を受けているのだもの。わかってはいても、こういう瞬間は、どうにもやるせなかった。
そして、センセーの見立てでは、残された時間は「最長で」あと20ヶ月、ということも知った。
おおよその事は聞いていたが、改めてはっきりと数字で知らされたのが、この頃だった。
「でも、まだ生きてるだけ、儲けもん。」
そう言えるひとみちゃんは、本当に、強くて、偉い。

8/8、9の両日、前回こぼした曲のTDとマスタリングが行われた。
投薬中で体調が上がらないようなので、ちょっと心配していたが、「当日までに絶対復活する!」との言葉通り、ひとみちゃんは元気な姿を見せてくれた。
手ぶらで来るようにきつく言っておいたのに、案の定、たくさんのお土産を抱えて。

8日は、いつものサウンド・クルーで、3曲のTDを終えた。前回、2日で7曲だったのだから、まぁ、こんなところだろう。昔と違い、事前にデータのやり取りもして、あらかた出来上がっているのだから、普通はもっとサクサク進むはず!と内心思っていたが、もちろん口には出さない。
ここは、ひとみちゃんがとことん納得するまでやるしかないし、作業に集中している時の彼女は、気力の衰えとか、グッタリした状態とは、全く無縁のようなのだ。

9日はバーニー・グランドマンにて、マスタリングだったのだが、私はそれこそ何の役にも立たないので、参加しなかった。
エンジニアは、前田康二さん。日本でもトップクラスのマスタリング・エンジニアだ。
この日、作業そのものは滞りなく行われたが、ひとみちゃんの体調は、思わしくなかったらしい。
打ち合わせの為、少し歩かなくてはならなかったそうで、暑かったこともあり、疲れが出たのだろう。
それまで、私達の前では、決して疲れた様子を見せないひとみちゃんであったから、この時は余程キツかったに違いない。その場にいたホリエさんは、かなり心配していた。

翌日、「昨日はスタミナ切れ。やっぱり投薬中はダメだなぁ。」とLINEが入った。
「来月は休薬期間だから、バッチリ元気で向かいます!」
彼女のこの気力には、心底、頭が下がる。

そして、札幌に戻ってすぐに、次の「もう一曲」が提示された。
「pinky」。懐かしい曲である。

to be continued…

ヒトミィク・プロジェクト 広本 葉子

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