BFN.47
2022/04/17
一報の後、新たな情報が入ったのは、日付が変わった午前2時過ぎだった。
緊急入院で輸血を行ったこと。医師は大腸からの出血を疑っていること。
少なくとも週明けまでは、検査・病状確認のため入院が必要なこと。
今後の予定は、とりあえず全てペンディングするということ。
まずは、検査の結果を待つしかない。
ところが。
なんとその翌日、ひとみちゃんは、半ば強引に、退院してきていた。
「点滴に繋がれてズーッとベッドにいるのはもう耐えられないからねーw」
ヘモグロビンは、まだ正常値の半分しか無いという。
「何かあればすぐ病院に来て輸血する約束で…先生も解ってくれました。」
驚きもし、呆れもし、当然、それで大丈夫なのかと心配した。
一方で、兎にも角にも退院できたことに安堵し、彼女のバイタリティーに感嘆する気持ちもあった。
せめて2、3日でも入院して十分な検査をし、容態を安定させて欲しいというのが本音だったが、どうしても退院したかった彼女の気持ちは、痛いほどにわかる。
入院が長引いて、やりかけの作業に支障が出ることがイヤだったのだろう。4月の上京が叶わなくなってしまうのではないか、ということも心配だっただろう。
こうなったら、最後まで、思うままに突っ走ってくれ。祈るような気持ちで、そう思う。
それにしても、すごいオンナである。
退院の2日後には、ひとみちゃんは早くもMV撮影を再開し、その後も精力的に動き回っていた。
「体調はなかなか上がらないけど、点滴で繋がれてるよかマシ!愉しいです!」とLINEが入り、この時、二枚の写真が送られてきた。
「死にかけてる倉本」と「昨日の衣装合わせの倉本」というタイトルが付いている。
一枚目はアキの押す車椅子に乗って病院を後にする(もしくは向かう)姿。もう一枚は、頭からつま先まで真っ白な衣装に身を包んだ、凛とした立ち姿だった。ボブのウィッグがよく似合っている。
まるで別人のようで、本人も「変なオンナ」と笑っていたが、この時、写真に添えられてきた文章の中で、頭から離れない一節があった。
「葉子ちゃん、あたしはもう…幽霊なのかもしれないね」
随分後になって、医療チームに取材したという大山監督から、話を聞いた。
そこでは、ひとみちゃんの病状は「2月の段階で、いつ逝ってしまってもおかしくない状態」と考えられていたそうだ。
それを聞いた時、私は、あの時の「幽霊なのかもしれないね」という言葉を思い出し、考えた。
あの頃、ひとみちゃんの肉体はとうに限界を超えていて、ただその精神力のみが彼女を動かしていたのかもしれないな、と。
そして、そんな自分の状態を、彼女は「幽霊」みたいに感じていたのかな、と。
この間も、アレンジの確認やエディットなどの作業は続いており、3月は慌ただしく過ぎていった。
本人は「あの入院はなんだったんだろうね」などと笑っていた。
そして、桜の季節も過ぎた4月8日。ひとみちゃんは最後の上京を果たす。
to be continued…
ヒトミィク・プロジェクト 広本 葉子
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