BFN.40
2022/02/28
新しい抗がん剤の投与が始まった。
コロナの蔓延は全国的にますます深刻になり、ひとみちゃんの体調も思わしくなかった。
「骨髄抑制が今まで以上にガッツリかかる」という副作用を考え、さすがのひとみちゃんも年末の上京を諦め、TDはリモートで行い、「INORI」の歌入れは来年に持ち越すことを伝えてきていた。
当時の私は、その判断を当然のこととして捉えていたが、彼女としては断腸の思いだったのだろう。
ひとみちゃんにとって、上京しスタジオで作業に関わることが、どんなに大切で楽しみなことだったのか。今になって、そのことが身に染みて感じられる。
12/19、なおちゃんの無観客配信ライヴが行われ、ひとみちゃんも、これを楽しんでくれた。
サポートとして私も参加し、ひとみちゃんの要請で「カメラマンとして」来るというショウジ(そもそも、人気バンドのドラマーだというのに申し訳ない話である)にも、何曲か演奏してもらった。
今回のレコーディング以外でショウジと演るのは、それこそ20数年前のひとみちゃんのライヴ以来だ。そういえば、なおちゃんの後ろで弾くのも、久しぶりだった。
こうして旧交を温め合い、一緒に演奏できるのも、ヒトミィク・プロジェクトのおかげである。
年末には、私はまた、コソコソと札幌に帰った。
ひとみちゃんに会いたいのはやまやまだったが、世間の状況と彼女の体調を考えると、気軽に会いたいとは言えない。それでも、帰省する旨を伝えると「絶対会おうね!」と言ってくれた。
それだけならともかく、「なんか美味しい物でも食べに行こう!」と。
自分は殆ど食べられないのに。病院とスタジオを除けば外出もしていないだろうに。
それでも相変わらず、帰ってくる私をもてなそうとしているんだと思うと、呆れて涙が出そうになる。
コロナも心配だし、飲食はやめようということで、スタジオ作業の日に顔を出すことにした。
約束の日、河野音響を訪れたが、案の定、ひとみちゃんの姿はない。昔から、待ち合わせをして彼女が時間通りに来ることは、まず無かった。そう、彼女は遅刻魔なのだ。そんなところも相変わらず。
久しぶりに会った河野っちと話をするうちに、ようやくお出ましになったひとみちゃんは、思ったより元気そうで、少しだけホッとする。美味しいプリンを差し入れてくれたジョー・ダウンの冨井さんを交えて会話も弾み、しばし和やかな時が流れた。
しかし、その3日後、ひとみちゃんは酷く体調を崩し、嘔吐や悪寒・腰痛で、眠れない一夜を過ごす。
やはり、新しい抗がん剤は、今までとは違う、きつい副作用をもたらしたようだ。
それまで、「吐かないのが取り柄」と言っていただけに、精神的にも辛かっただろう。
上京は諦めて正解だった。だが、本人は、「やっぱ、上京は無理だったね」と言いつつも、「しょぼくれずに体調を上げて、1月には行けるように頑張る!」と自分を奮い立たせていた。
12/30、予定通りTDが行われ、ひとみちゃんとアキはリモートで参加、31日には「ギリギリ年内に間に合った~」と言って、新曲が送られてきた。本当に、休まないオンナである。
こうしてバタバタと師走は過ぎてゆき、2020年も最後の日を迎えた。
「去年は最後の正月かぁと思ってたのに…今年も無事に年を越せることに感謝。皆さんのお陰です。」
この言葉を、来年もう一度聞けますように。
それが難しいことは、頭ではもう解っていたが、そう願わずにはいられなかった。
to be continued…
ヒトミィク・プロジェクト 広本 葉子
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